にっぽん!歴史鑑定 #31「阿部定は悪女だったのか?」
が1月23日に再放送されました。
BS番組「にっぽん!歴史鑑定」で放送された「阿部定は悪女だったのか」は、多くの視聴者に強烈な印象を残した回だった。昭和史の中でも特に有名な猟奇事件として知られる“阿部定事件”を扱った内容であり、放送後には「単なる殺人事件ではなかった」「時代背景を初めて理解した」「想像以上に切なかった」といった感想が多数見られた。
阿部定事件は1936年(昭和11年)に発生した事件であり、愛人関係にあった男性を絞殺し、その局部を切断して持ち歩いたという衝撃的な内容で知られている。そのインパクトから長年にわたり“昭和最大の猟奇事件”と呼ばれてきた。しかし今回の番組では、単なるセンセーショナルな事件としてではなく、「阿部定とは何者だったのか」「本当に悪女だったのか」という視点から丁寧に掘り下げていた点が特徴的だった。
「思ったより悲しい話だった」という感想が多かった
番組を見た人の感想として特に多かったと推測されるのが、「怖い事件だと思っていたのに、実際は悲しい話だった」という反応である。
事件名だけを知っている人にとって、阿部定は“狂気の女”“異常な悪女”というイメージが強い。しかし番組では、幼少期からの家庭環境、芸者時代の苦労、男性社会の中で翻弄されてきた人生なども紹介されていた。
そのため視聴者の中には、
- 「時代に潰された女性だったのでは?」
- 「今の価値観だけで裁けない気がする」
- 「孤独と執着の人生だった」
と感じた人も少なくなかったと思われる。
昭和初期という時代は、女性の自由が今よりはるかに制限されていた。経済的にも社会的にも男性へ依存せざるを得ない状況があり、女性が生きる選択肢は非常に狭かった。番組では、そうした時代背景を丁寧に描いていたため、「単なる異常者」として片づけられない複雑さを感じた視聴者も多かっただろう。
「メディアが怪物を作ったのでは?」という視点
今回の放送で印象的だったのは、事件そのものだけではなく、当時の新聞報道や世間の熱狂についても取り上げていた点である。
阿部定事件は当時、連日新聞の一面を飾り、日本中が大騒ぎとなった。まだ戦前でありながら、芸能スキャンダルのように事件が消費され、人々は「阿部定」という存在に異様な興味を示した。
番組を見た視聴者の中には、
- 「今の週刊誌報道と変わらない」
- 「マスコミが伝説化した事件だったんだな」
- 「社会全体が阿部定を“怪物”として見たかったのかもしれない」
と感じた人も多かったのではないだろうか。
実際、阿部定事件は“猟奇”という言葉とセットで語られることが非常に多い。しかし番組では、「なぜ人々がそこまで熱狂したのか」という“受け手側”にも焦点を当てていた。
つまり、事件そのものだけでなく、時代の空気や大衆心理もまた、この事件を巨大化させた要因だったという見方である。
「愛なのか執着なのか」で感想が分かれた
阿部定事件を語る上で避けて通れないのが、「これは愛だったのか、それとも異常な執着だったのか」という問題である。
番組内でも、阿部定が「好きだから殺した」という趣旨の供述を残していたことが紹介されていたが、この点については視聴者の間でも意見が分かれたと考えられる。
ある人は、
- 「愛情が極端な形で暴走した事件」
- 「精神的依存が強すぎた」
- 「愛というより所有欲だった」
と受け止めただろう。
一方で、
- 「純愛として美化するのは危険」
- 「結局は殺人事件であることを忘れてはいけない」
- 「ロマン化しすぎる風潮に違和感がある」
という冷静な感想を持った人も少なくなかったはずだ。
実際、この事件は映画や小説などで何度も作品化されており、“究極の愛”のように描かれるケースもある。しかし番組では、その美化されたイメージだけでなく、事件の残酷さや異常性についてもバランスよく扱っていた印象がある。
「昭和初期の空気感がリアルだった」という声
歴史番組としての完成度について評価する視聴者も多かったと思われる。
特に、
- 戦前の東京の街並み
- 芸者文化
- 当時の男女関係
- 新聞報道の熱狂
- 昭和初期の社会不安
などがリアルに描かれており、「単なる犯罪番組ではなく昭和史として興味深かった」という感想につながった可能性が高い。
1936年は二・二六事件が起きた年でもあり、日本社会全体が不安定化していた時代だった。軍部の台頭、言論統制、社会不安など、重苦しい空気が漂う中で、人々は阿部定事件のような刺激的な話題へ異様な熱狂を見せた。
視聴者の中には、
- 「時代そのものが狂気だった気がする」
- 「社会不安が事件への熱狂を生んだのでは?」
- 「現代社会とも重なる部分がある」
と感じた人もいたのではないだろうか。
「現代ならSNSで大炎上していた」という感想も
番組を見ながら、現代社会との共通点を感じた人も多かったはずである。
もし阿部定事件が現代で起きていたなら、SNSやネットニュースで爆発的に拡散され、連日ワイドショーが取り上げていた可能性は高い。
そのため、
- 「現代ならネットリンチ状態になりそう」
- 「炎上文化と本質は変わっていない」
- 「人間は昔からスキャンダルが好きなんだな」
という感想を抱いた視聴者も少なくなかっただろう。
また、“異常な女性”として消費される構図そのものに違和感を覚えた人もいたと思われる。
現代ではジェンダー視点から歴史を見直す動きも強くなっているため、「男性中心社会の犠牲者だったのでは」という見方も以前より広がっている。
「阿部定は悪女だったのか?」への答えは簡単ではない
番組タイトルそのものが問いかけになっていたように、「阿部定は悪女だったのか」というテーマに明確な答えを出すのは難しい。
もちろん、人を殺害したという事実は極めて重大であり、決して許される行為ではない。しかし一方で、彼女の人生や時代背景を知ることで、単純に“怪物”とも言い切れない複雑さが浮かび上がってくる。
番組を見た人の多くは、おそらく、
- 「単純な善悪では語れない」
- 「昭和史の闇を感じた」
- 「人間の孤独や執着の怖さを考えさせられた」
という感想を抱いたのではないだろうか。
また、歴史上の有名事件をただ消費するのではなく、「なぜ人々はこの事件に惹きつけられ続けるのか」を考えさせる内容だった点も、この番組の大きな特徴だった。
まとめ
「にっぽん!歴史鑑定▼阿部定は悪女だったのか」は、単なる猟奇事件特集ではなく、昭和という時代、人間の欲望、社会の空気感まで深く掘り下げた内容だった。
阿部定事件は長年、“昭和最大の猟奇事件”として語られてきたが、番組を通じて「本当にそれだけだったのか?」と考え直した視聴者も多かったはずである。
愛情と執着、孤独と依存、メディアと大衆心理――。この事件が今なお語り継がれる理由は、単なる異常犯罪ではなく、人間社会そのものの危うさを映し出しているからなのかもしれない。
だからこそ視聴者は、恐怖だけでなく、どこかやるせない感情を抱きながら番組を見終えたのではないだろうか。
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